東京の夜が最も魅力的に見える映画
ソフィア・コッポラ監督が、自らの来日での経験を生かして書き上げた本作で、第76回アカデミー賞脚本賞を受賞。CMを撮るために来日したハリウッドのアクション・スターと、カメラマンの夫に同行するも、ホテルに取り残されたアメリカ人女性が、たがいの気持ちを理解し合う。ただそれだけの物語だが、東京のカルチャーが外国人旅行者の目線で鮮やかに映し出され、彼らの高揚感と孤独、とまどいを伝えていく。
タイトルにあるとおり通訳の不備で意志の疎通ができないもどかしさや、某ハリウッド女優をパロったキャラが笑いを誘いつつ、主人公ふたりの感情を台詞の「間(ま)」で表現するなど、アメリカ映画とは思えない曖昧さが本作の魅力。むしろ「間」の感覚を知る日本人の視点で観た方が、より主人公たちの切なさを感じられるかも。コミカルとシビアな表情をさり気なく使い分けるビル・マーレイと、控え目に孤独感を表現するスカーレット・ヨハンソンの演技には存分に共感。「はっぴいえんど」を始めサントラの選曲も含め、映画に描かれるあらゆる要素が、優しく繊細に登場人物の心を代弁する。(斉藤博昭)
何かが起きそうで結局大して何も起きない映画が大の得意なソフィアコッポラ。
DVD持ってるくらい好きな作品で今回改めて酒飲みながら深夜に視聴。久々に観て思ったことを。
以下、ネタバレなのでご注意。
海外の人から見たここが変だよ日本人
この映画、明らかに悪意があります。確信犯でしょう。
冒頭のシャワーのヘッドの位置が低いシーンとか。
パークハイアットって高級ホテルでいくらなんでもそれはないでしょ。よく見るとシャワーのヘッドを上に上げられる幅あるし。自分で低くしといて日本人の身長は低いみたいな演出方法はちょっもあざとい。
ダイヤモンドユカイとの会話のシーンも日本人は時間に厳しいというのを表現しようとしたんでしょうけど出演者に対してあの対応はありえないしね。
娼婦のストッキングおばさんもただの変人だし。
けど撮影の時のカメラマンがビルマーレーとコミュニケーションをはかろうとしてて有名人の単語しか出てこなくて全く噛み合わないシーンはなんかはわかるな。
とりあえず有名人の名前言っとけば盛り上がるだろ的な感じはある。
海外の人から見る日本人ってこんな感じで見られてるのかなと思いました。
多少デフォルメされてる部分はあるにせよ。
日本人ってこうでしょ的な感じを受け入れられるかられないかでこの映画の評価は分かれると思います。
音楽と映像のセンス
ソフィアコッポラについてる右腕のプロデューサーだっけかな。音楽の選曲がハンパなくセンスがいい。
私はこの映画をある種「PV」として観てました。
今回はじめて気づいたんですけどビルマーレーたちが初めて渋谷で遊ぶシーンのバックでかかってるのがThe Chemical Brothersだったとは。
さらに東京の夜景と合わせたMy Bloody Valentineが美しいこと。夜景にシューゲーザーのせたのってこの映画くらいじゃない?新宿の街並みとシューゲーザーを合わせるなんて発想はやはり海外の人ならでは。
からのラストのThe Jesus and Mary Chain。最近また聴いてる人増えてるHappy End。
ワンシーンワンシーンが曲と共にはっきりと画面に刻まれてます。
この映画に関わらず『ヴァージン・スーサイズ 』や『マリー・アントワネット 』なんかのサウンドトラックも素晴らしいです。
ソフィアコッポラの映画音楽にハズレなし。
映像の撮り方や画角なども海外の人にしか撮れないものです。
いつも自分が見ている東京の風景と海外の人から見る東京とでは全然違うんだなと改めて思いました。ゲームセンターに興じる日本人やバラエティ番組を見るシラケた空気感なんか本当にリアルでした。
パークハイアットからの東京の夜景
これにつきます。本当に綺麗です。
私もパークハイアットのバーに何度か行ったことあるんですけど生演奏をしてて本当に異空間です。
こんなところに何泊もしてるビルマーレーとスカーレットヨハンソン贅沢すぎますよ。
一泊数万円しますから。ビルマーレーは映画スターなのでわかりますけどカメラマンの夫をもつスカーレットヨハンソンはそんなに金銭的に余裕あるのか疑問でした。
この映画を観てたらこのバーでウィスキーなんか飲みたくなるんじゃないですかね?
(一杯数千円しますけど)
映画の内容云々でなくこのホテルのPVでもあるなと思いました。
何か起きそうで結局何も起きない
この映画ってただの「スカーレットヨハンソンとビルマーレーの恋愛映画」としてくくってはいけない感じがします。結局男女の関係にもならないし。
2人でベッドに入るシーンは少しドキドキ。けど手を出さないビルマーレー。
(翌日赤髪のおばさんとやっちゃうけど。)
そういう簡単な関係じゃないというか、もっと崇高な関係性と距離感が非常に観ていて居心地がいいんです。
展開が地味なので逆にこの映画が退屈と思ってしまう人はいるでしょうね。
けれど人は映画に余白が多ければ多いほど考えるんです。
最後の別れ際、新宿の西口で2人は抱き合います。
ビルマーレーがスカーレットヨハンソンに何か耳打ち際に話してますが観客には何を言ったのかは聞き取れない。
連絡先を教えたのか、いつか再会する約束をしたのかは観客の想像にお任せ。
いずれにせよなんだかいつまでも余韻に浸れるラストです。
数年置きに観て毎回「やっぱ好きな映画だな」と感じます。
東京の人なんかは特に自分の知っている場所が出てくるのでこの映画に対して思い入れの強い人は多いのではないでしょうか。
また数年後に観ます。