1987年/ドラマ/119分
純(吉岡秀隆)はある農家の娘、れい(横山めぐみ)に出会い一目惚れしてしまう。東京の定時制高校に行きたいと 言うれいに影響され、純は東京に行く決意をする。五郎(田中邦衛)の誕生日に風力発電を贈った純と螢(中嶋朋子)。
しかし五郎は自分に相談もせず東京行きを決めた純を責める。落ち込んだ純は家を飛び出す。
そんな時、霜注意報のサイレンが鳴った・・・。
テーマは親子感のすれ違い
この回がはじめてかな?
純が五郎に怒鳴ったり、自分の思いを激しめにぶつけるのは。
今までは親父は絶対的な存在で一方的に怒られるだけだったけど五郎に向かって「情けない」と言い放つ。
いままで泣きながら懺悔はあったけどこんなにも自分の感情をぶつける様になったか。と、ドラマシリーズから観てる者からするとなんだか親戚のおじさん目線で観れるわけですよ。
今回はそんな純が惚れた女きっかけで東京へ上京するまでの話。
この回では純と五郎はびっくりするくらい噛み合ってない。
純は良かれと思って五郎の誕生日プレゼントに風力発電を作るが(純の家には電気が通ってない)、五郎はそれよりも東京行きを自分に隠された事に腹を立て誕生日の日に空気も読まずに親子喧嘩。
純は純なりに親父に喜んでほしかっただけなのにと涙ながらに訴える。
純は東京行きの事を五郎に隠していたのは五郎が困るからだ。
純は近頃、五郎が自分に対して遠慮する事に傷ついていたが、気づけば純も五郎に対して遠慮していたというこの構図が上手い。
対する五郎も冒頭に「いまの純が何考えるかよくわからない」と相談するシーンがある。
お互いの事をわかりたいけど立場によって見えるものや考えが異なるが故に、すれ違う。
終始この「初恋」の回では純と五郎は噛み合わない。
最後の最後にトラックの運転手である古尾谷雅人経由で五郎から泥の一万円札渡されはじめて親父の気持ちを理解する純。
なんたるカタルシスだろう。
しかも五郎との別れのシーンは結構サラッとしてて後は東京へ行ってしまったれいちゃんとの回想シーンが尾崎豊の歌と共に流れてくる。
それを古尾谷雅人がぶった切って五郎から貰った金を「受け取れない」と言うことで純にその金を返す。
一度れいちゃんに意識をいかせといてからの泥の一万円札という高等テクニック。
そしてこの一万円札を見て五郎との北海道の生活を回想する。
この回が初登場のれいちゃんとの回想シーンとは比べ物にならないほどの重厚感溢れる回想シーンとなっている。
だって親父と暮らしてきた生活の重みが初登場のれいちゃんとは全然違うんだもん。
回想シーンをさらに回想シーンで凌駕する。
これが出来るのは後にも先にもこの北の国からでしか出来なかったことかもしれない。
しかもこのあとのスペシャル版ではさらに回想シーンが増えていくわけです。
昔と今の「別れ」は別物
現代ではスマホがあって当たり前。
LINEやSNSがあるからどこでも誰とでもすぐに繋がれてしまう世の中。
元カノがどうしてるとか知ろうと思えば知れるある意味怖い世の中。
だから人と人が別れると言うことは今と昔とでは全くニュアンスが異なってくる。
それだけ昔は人との別れというのは重たいものだった。
だから昔の歌謡曲なんか聴いてると今では書けないであろう心に突き刺さる様なものが多かった。
幸か不幸か時代が便利になればなるほど本来生まれていたであろう感情が生まれなくなる。
さて、どちらがいいのかはまた別の議論で。
こういった感情は今の子達にどれだけ伝わるのかは疑問だけど先日、田中邦衛さんの追悼ということで本作がテレビ放送され大きな反響があったことからもいくら時代が便利になろうが普遍的なテーマを描いていることに成功してると言えよう。
最強の幸なし男「チンタ」
話は変わるがここで注目したいのが純の親友であるチンタ。
なんとも思春期にはイジられそうな名前である。
彼はこの回で彼女と称していたれいちゃんを純に取られ、家の畑は天候により全滅している。
チンタは自分の事を「面は悪いし、頭も悪い、おまけに畑も全滅で、元来ついてない家系だ」と的確に卑下しているがまさしく幸薄キャラはこの後も継続している。
「'98 時代」に至っては実の兄貴にまたしても彼女を取られそのままゴールインしており、元カノが姉となってしまう。
さらにこの時も兄貴の畑が病気でダメになり草太兄ちゃんにタダ同然で買い叩かれることに。
全く、倉本聰はこのチンタに対してとことんドS過ぎるだろ…
と、チンタに注目してる人が誰もいないので触れておく事にした。
この後、純はセフレに子供を孕ませ、蛍は不倫に陥りさらににドロドロのスペシャル版が待ってるのでそちらもじっくりと感想を述べていきたいと思う。
⬇️DVD全部持ってるけどBlu-ray買うか迷うところだ…